薬剤師の在宅医療

ご存知でしたか。医療保険や介護保険には、薬剤師がご自宅を訪問できる制度があります。
例えば、こんな困りごとはありませんか。

 

 

たくさん薬があっておぼえきれません

70代の太郎さんは、心臓の専門病院X病院と、近所のYクリニック(内科)を受診していました。
X病院からは7種類、Yクリニックからは4種類、合計11種類の内服薬が処方されました。
しかし、自分で薬を管理していたので、どれがどの薬か分からなくなってしまいました。
そこで、担当のケアマネジャーの依頼で薬剤師が自宅を訪問することになったのです。
すると、X病院、Yクリニックが出した薬が袋に入ったまま。大量の飲み忘れ.飲み残しがあると分かりました。

 

 

飲み忘れがないよう、一包化という方法やお薬カレンダーがあります

飲み忘れがないように、飲むタイミング1回ごとにまとめる一包化という方法があります。お薬カレンダーも使いましょう。そのためにもまずくX病院とYクリニックで出ているお薬の飲み合わせをチェックする必要があります。

まず薬剤師は、何種類もの薬の中に、同じ効果の薬が重複していないかや、飲み合わせに問題がないかをチェック。いくつもの病院やクリニックにかかっていると、もしかしてお医者さんが同じ薬を出している可能性があるからです。
薬剤師は、もし飲み合わせに問題があったり重複した薬が出ている場合には、医師にその分の薬を減らすよう、相談することができます。
次に、飲み忘れ防止対策としては、朝に飲む薬、寝る前に飲む薬など、飲むタイミングごとに薬を1袋にまとめる一包化を提案し、医師に了解をとりました。
一包化を行う時、薬剤師は薬を1個1個シートから取り出します。その際、湿気に弱い薬や光に弱い薬など、シートから取り出しても問題が出ないかどうか、確認しています。*最後に、薬入れのついたカレンダー「お薬カレンダー」を使って、いつどの薬を飲むか一目で分かるようにしました。これで家族やヘルパーなど誰が見ても分かりますので、きちんと飲んだかチェックもできます。
お薬カレンダーにはいろいろな種類がありますので、ライフスタイルに合ったカレンダーを提案することができます。
おかげで、太郎さんは毎日きちんと薬を飲み、つつがなく生活を送っています。

 

1日3回の薬を、まとめて飲んでもかまいませんか?

薬が血液中に吸収され、ある一定の濃度になると、効果がもたらされます。
少なくては効果がないし、多ければ副作用が出ることもあります。薬は血中濃度が一定になるように、服用時間と服用量が決められているわけです。そのため、もし飲み忘れてしまっても2回分を一緒に飲んではいけません。1日3回服用の薬は、服用予定時間よりあまり経過していなければ、すぐ服用してもいいですが、少なくとも次に服用する時間は4時間以上あけてください。
万一2回分をいっぺんに飲んでしまった時、大丈夫な場合もありますが、危険な薬もあります。
めまい、ふらつき、頻脈、意識混濁など急性症状が出たら、すぐにかかりつけの医師や薬剤師に相談してください。飲む時間と回数は、必ず守りましょう。

 

 

 

飲みにくい薬はどうしたらいいの?

二郎さんは数年前に脳梗塞となり、左半身にまひがありますが、上手に工夫しながら一人で暮らしています。
ただ、高血圧、前立腺肥大や、眠れないなど症状がありました。
お医者さんに定期的に通院し、血圧を下げる薬、前立腺肥大症の薬、胃酸を押さえる薬、吐き気止め、睡眠薬の5種類の薬が出ていました。
しかし、睡眠薬以外の薬は、薬をほとんど飲んでいませんでした。
睡眠薬は効果が実感できるけど、「他の薬はなんだかよく分からない」とは二郎さんの弁。

 

 

 

飲みやすい方法をご提案します。

飲みやすい方法を考え、色々なアイデアを提案することができます。薬の成分や形のことは薬剤師におまかせください。

二郎さんの場合、実は錠剤が大きくて飲みにくかったり、手のまひのため薬をシートから取り出しにくかったのです。
このことに気づいたケアマネジャー経由で相談を受けた薬剤師が、二郎さんの家に訪問しました。
薬剤師はまず、大きい錠剤について、割っても問題がないことを確認し、半分に割って調剤することにしました。
薬によっては、割ってしまうと効果が強くなったり弱くなったりする場合があるので、注意が必要です。もし、割ることができない場合は、同じ効果でもっと飲みやすい形の薬に変えてもらえるよう、薬剤師はお医者さんに提案することもできます。次に、手にまひがあっても取り出しやすいように、あらかじめ薬をシートから出し、二郎さんが飲みやすいように分包しました。また、どの薬が何に効く薬か分かってもらえるよう、二郎さんに丁寧に説明しました。そのうえで、薬の飲み方と何の薬かが一目で分かる薬箱を作りました。
これらの工夫により、二郎さんはきちんと薬を飲めるようになり、血圧や前立腺の症状も改善しました。
ただ単に「薬は飲まなければならないもの」というのでなく、どういう効果があり、なぜ飲まなければならないのかご本人と話し合うのも、薬剤師の役割です。

 

飲み込みの悪い場合はどうしたらいいですか?

飲み込みが悪く、むせやすくなっている「嚥下障害」の人には、嚥下補助ゼリーやとろみ剤などがあります。
嚥下補助ゼリーは、薬の飲み込みを助けるゼリーで市販しています。ゼリーで薬を包み込むようにして飲みます。水だとむせてしまう場合も、のどをスルッと通り抜け、胃に届いた時には薬用成分の吸収を助けます。

とろみ剤は、薬だけでなく、液体の飲食物にまぜて、飲み込みやすくするものです。嚥下障害がある方は、液体のままだと気管に誤嚥して、誤嚥性肺炎を起こすので、くれぐれも注意しましょう。

 

 

 

もしかして薬のせい?食欲が出ません。

70代の花子さんは、交通事故で腕と足を骨折しました。
病院での治療は順調に進みましたが、花子さんの悩みは、痛みと環境の変化により眠れなくなってしまったことでした。
この時、医師は、ある種類の睡眠薬を処方しました。
そのかいあって眠れるようになった花子さん。ケガも治り、無事退院しました。
ところが、なぜか食欲が出ず、2カ月で体重が5キロも減ってしまったのです。カが出ないので、以前のように歩けなくなってしまったで、なんと花子さんは要介護3となってしまいました。

 

 

 

食欲不振の原因は薬の副作用かもしれません

「なぜ食欲が落ちているのか?」「その原因は何か?」を飲んでいる薬の効果・作用・特徴という側面から探り当てていきます。薬の苦味が食欲をなくしているかもしれません。

ヘルパーとケアマネジャーからの連絡で、薬剤師が家を訪問しました。その時、薬剤師は「食欲不振は、処方されている睡眠一薬が原因では?」と気がつきました。花子さんがしきりに「口の中が苦い」と訴えていたからです。
薬剤師はこのことを医師に伝え、薬が変更になりました。
花子さんは次第に口の中の苦みがなくなっていき、食欲が復活しました。最終的には、体重も骨折前までの状態に回復し、その後の介護認定で「自立」となりました。「睡眠薬がもとで、寝たきり寸前にまでなってしまうんですね」と、花子さんも家族もびっくり。

ケアマネジャーとヘルパーも、「もっと早く薬剤師さんにチェックしてもらえれば、ご本人もつらい思いをしなくてすんだかもしれないね」と顔を見合わせ、「今後に生かしたい」と話しています。

 

薬の副作用には、意外なものもあります

花子さんの例のように、薬で思わぬ体調変化を起こすことがあります。以下の例は、薬の副作用が疑われる症状です。年のせい、病気のせいと思い込まず、「もしかしたら薬のせいかな?」と感じたら、薬剤師や医師に相談してみてください。

■食事:味覚が変わる、口が渇く、むせこむので食べづらい、食べたくない
■排泄:尿が出づらい、3日以上便が出ていない、下痢状の便がよく出る暑くもないのに汗が出る暑いのに汗が出ない
■睡眠:日中の眠気がひどい、夜眠れない
■体の動き:ふらつく、震える、歩きにくい、力が入らない、動作がゆったりする。

 

一般薬や健康食品との飲み合わせも相談できます

医師から処方された薬と、薬局等で自分が買った薬が重複していたり、飲み合わせが悪いこともあります。また、サプリメントや健康食品との飲み合わせが合わないこともあります。
飲み合わせの合わない代表的なものは、次のようなものがあります。

[1] グレープフルーツと血圧を下げる一部のカルシウム拮抗剤、抗血小板薬、脂質異常症治療薬、ある種の睡眠薬、免疫抑制剤等
[2] 納豆、小松菜、クロレラと一部の抗血栓予防薬
[3] 牛乳と一部の抗生物質

 

 

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